波力発電とは

ダ・ビンチが提案する波力発電

波力エネルギーを電気エネルギーに変換するにあたり複数の手法が提案されています。 しかし、いずれの手法においても波の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際に大掛かりな装置が必要となります。 そのため、維持費や設備コスト、設置場所の制限などの点から実用化には至っていません。 そこで、我々は波の運動エネルギーを増幅することで、発電装置を小型化し、維持費や設備コストを削減しつつ、設置場所に縛られることのない波力発電を提案します。

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日本周辺に押し寄せる波から得られる膨大なエネルギー
  • 平均約3100万kw(日本の総発電量の1/3)
  • 日本沿岸では平均6.0kW/m、海岸線距離を5200kmとして、総エネルギーで3.1 × 107kWと算定された
従来の波力発電方法

これまでも波力や潮力を利用して圧縮空気を製造し、その圧縮空気の圧力でタービン類を回転させて発電する研究が行われてきました。 しかし、それら多くの研究は波の形状変化による空気室内に発生する圧力を利用したものであり、波が持つ運動エネルギーを十分に回収できていませんでした。 また、波力による効率的な発電のためには波高が高い外洋での発電が必要です。そのため、陸地から離れた場所での発電には海底ケーブルの埋設等が必要となり、送電設備や発電設備などの設備費の増大や流失などのリスクもあり投資回収が困難でした。

潮力による発電では、波の運動エネルギーを回転動力に変換することで発電する、発電装置が多く開発されてきました。 それらの装置が潮力を有効に得るためには、流速の早い水路等に設置する必要があり、設置場所が限定される問題があります。

最近では護岸壁またはその近傍に設置可能な発電装置も開発されています。 例として、平塚波力発電所では、波の運動エネルギーを受け止めて、その力により弾性体を変形させ、変形により弾性体に充填した油等の作動媒体に生じた圧力を発電に利用する構成をしています。 しかし、湾岸部などの特に波の穏やかな海域では十分な波の運動エネルギーを得ることができないため、外洋に面した比較的に波高の高い海域に設置する必要がありました。

波力増幅回収装置

我々の提案する波力増幅回収装置は、従来の波力発電では発電が困難であった海域においても、波力発電が可能となります。 具体的には、波が穏やかであるために、波力発電のために必要な圧力や波の高さが得られない海域(ケーソン波止の付近等)においても、波力による発電が可能となります。 提案する波力増幅回収装置では以下の2点を主要な特徴とします。

  • 打ち寄せる波と戻る波の両方の運動エネルギーを回収する
  • 波の運動エネルギーを増幅して圧縮ポンプに伝達する増幅機構を持つ

波力増幅回収装置の仕組み

てこの原理のシーソー型

力F × 距離(力点から支点)= 作用点の力 × 距離(支点から作用点)

力点にかかる力Fが一定でも、距離の比で作用点の力の増幅率が変わります。

増幅装置の形態

波の力を波受け部で受け止め、支点を介して作用点に力を増幅して伝えます。その増幅した力でポンプ部を押して圧力空気を作り、圧縮空気を蓄圧タンクへと送ります。

波力増幅回収装置の特徴

特徴1:打ち寄せる波と戻る波の両方を利用

開口部を設けることで、流入してくる波と護岸壁で反射して流出する波の両方が持つ運動エネルギーの利用を可能とします。 波の方向が反転するたびに波受け部で波を受け止め交互に圧縮ポンプ部を押すことで、圧縮空気を蓄圧タンクに送る工程の繰り返しが可能となります。 これにより、打ち寄せる波と戻る波の双方向からの波を利用することができ、エネルギー効率の向上が見込まれます。

特徴2:波の穏やかな護岸壁でのエネルギー回収を実現

波の穏やかな地域や護岸壁では、波のエネルギーの利用が困難でした。そこで、「てこの原理」を利用して力点と支点、支点と作用点との距離の比率を変えることで、小さな力を大きな力に増幅します。 その比率は設置する護岸壁の状況に応じて任意に設定が可能です。そのため、小さな波でも波のエネルギーの利用が可能となることから、外洋に発電設備を設置する必要がありません。 従って、既存の波力発電で課題であった、発電設備の設置場所の問題が解消されます。 波力増幅回収装置では増幅部を伸縮可能とし、海面の高さに応じて、波受け部が上下に移動することで、常に最適な条件で波のエネルギーを受け止めることができます。

特徴3:設備コストの低下

波力増幅回収装置は蓄圧タンク部に溜めた圧縮空気によりタービン類を回転させることで発電を行います。 この蓄圧タンク部は陸上への設置が可能であることから、発電装置も同様に陸上に設置が可能です。 この特徴により、波力発電の設備コストの著しい低下が見込まれます。

特徴4:環境の変化に対して柔軟に対応が可能
(1) 潮位の変化への対策

波受け部の比重を海水よりも軽くすることで、波受け部をフロートとします。 フロート部の浮力により潮位に応じてスライド部が伸縮することで、波受けに適正な位置で波受け部を維持することが可能となります。 従って、常に最適な状態で装置を稼働できることから、環境の変化に依ることなく効率の良い発電が見込まれます。

(2) 台風など災害時における対策

潮位センサー等で検出した波の高さが台風等で異様に高まった時、スライド部にワイヤー等を接続して、ウインチ等で波受け部の巻き上げが可能な構造とします。 これにより、災害時に波受け部の破損を防ぎ、メンテナンス等のコスト削減が見込まれます。

波力発電の開発イメージ

発電フロー

波の運動エネルギーを利用して圧力増幅回収装置により圧縮空気を製造します。 その圧縮空気を蓄圧タンクに蓄圧します。蓄圧タンク内(最大1MPa)の圧縮空気をレギュレーターで400 kPaに規制してRE汽力発電ユニットに供給します。 供給された圧力空気の圧力と大気圧との差圧によりRE汽力発電ユニットを回転させて、同軸に接続された発電機で発電します。

発電シミュレーション
RE汽力発電ユニット見込性能

定格350kPaの差圧で約9kW出力を目指す

今後の取り組み
  • エンジン回転数と空気流量の最適化
  • RE膨張機と発電体の最適化設計

*RE膨張機の最適回転数で最大出力となる発電機の設計(現在進行中)

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波力調査実験地

泉大津フェニックス埠頭の赤丸部分に実験装置を設置するための構造物を設置して、各種形状の波力増幅回収装置の試験検証を行います。

設置イメージ

波力増幅回収装置はH鋼を2本護岸壁から海中に向けて固定し、 そのH鋼をガイドレールとして装置を仮設置して試験を行います。 2023年度より連続試験のため常設する予定です。

万博会場への展示に向けて

夢洲の現状

夢洲南西海岸(上記図赤丸)は万博会場外の施設となるため、万博会場内に波力発電の状況を確認できるモニターを設置します。 モニターには波の状況や発電量などのデータと実際の海の様子を映し出して、来場者に見ていただくことを予定しています。

夢洲南西海岸設置イメージ
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お問い合わせ

湾岸波力発電に関するお問い合わせは下記のメールアドレスからご連絡下さい。
info[at]davinci-mode.co.jp
※ [at] は @ に置き換えてください